節目

節目

 

会社を創業して10年が経ちました。

今年で11年目。

創業するにあたり、会計士の先生に

『アパレル不況のこの時代に、ましてやこんな少額の資本金で、しかも新婚で、あなた創業なんてして本当に大丈夫なの?』

と、とても心配された事が、まるで昨日の事のようです。

 

創業して2年くらいは、相方で当時パタンナーだった清水と2人で、年間360日は仕事してたにも関わらず、毎月毎月自転車操業で、給与なんてマトモに取る事も出来ず、銀行からの融資も受けれない、

真っ赤っかの赤字。

毎月、月末にやってくる支払いへのプレッシャーで、毎日のようにトイレで嘔吐してました。

 

それでも、異業種の仲間達と事務所をシェアし固定経費を最小限にとどめ、工場さんの大きな大きなご協力を得て、老人ホームのスタッフさんのユニフォームを作ったり、格闘家の衣装を作ったり、OEMを中心に、なんとか3年目で会社が薄利ながらも回るようになり出し、

3年目には僕と清水の目標だった自社ブランドを立ち上げる事が出来ました。

 

それと同時に、『どうせ単独で事務所を借りるなら、自社ブランドのお店を併設する』という、当時は誰もしていなかったであろう事を考え、『出来たばかりのブランドが、フラッグSHOPなんて無謀だろ! 誰が買いに来るんだよ?』と周りに鼻で笑われ罵られ、心配される声をも振り切って、それを実現させてしまいました。

 

それが今のName.とFURTHER の始まりです。

 

 

 

 

 

創業するにあたり、会計士の先生に

『どんな会社にしたいの?』という質問をされて、

『会社経営は初めてだから、どんな会社になるかなんて分かりませんが、

個人的な目標は、10年後に会社を誰かに譲渡できるような自分でいたいです』

 

と答えました。

 

 

そして2年前くらいから、本格的に会社を譲渡する事を意識して働くようになり、経営のこと、お金のこと、自分が譲渡に向けて考えていること、全てを社員にオープンにするように心掛けました。

 

不思議なことに、そんなタイミングで国内外の会社や個人から数件、『ブランドを会社を売る気は無いか?』というオファーをもらってたりもしましたが。

 

会社もおかげさまで6期連続黒字。

 

資本金も増資し、それなりの法人になり、

 

自分の目標だった10年も過ぎました。

 

自分の中で、ファッションという仕事、特にウチのようなブランドは、時代に沿って、そして既存するものに対して、ほんの少しエッセンスを加え、ほんの少し角度を変えて、少しだけ新しいものとして表現し提案する。そんなブランド、そんな仕事だと考えています。

 

そんな中で、歳を重ね、今に満足をし始めてしまった人間が先頭に立ち、そのブランドの旗を振り続けて、果たして良いもの、顧客さんが求めるものを作る事が出来るのか。

 

そういう自分に対する葛藤に近いものがあったのも事実です。

 

 

もちろん家庭の事情や、精神的なもの、他にどうしてもやりたい事が出来たり、興味のあるオファーを頂いた事も大きな要因なんですが。

 

でも、個人的にウチのブランド=会社に関しては、やはり若くて感性の豊かな人間達が中心になり判断しやっていった方が、これからは絶対に良いんだろうなと考えて過ごしてきました。

 

実際、プレスを全て任せていた松坂、清水の片腕としてパターンを全て引いてきた山田、生産というブランドの要を責任を持ち果たしてきた安部、そして店頭に立ち、誰よりも顧客さんに近い位置でブランドを見てきた山下。

 

この4人が中心になって、この数シーズンは企画、ビジュアル、生産、営業、販売をこなし、数字を作ってきたという実績も自分の中では大きいです。

 

 

 

そんなこんなで、家族とも相方とも社員とも会計士の先生とも相談し、

理解をもらい、2017年12月31日をもちまして、会社の代表取締役から退き、会社の経営権を全て社員だった安部に譲渡する事になりました。

 

『本当に10年で譲渡できる状況を作るなんて!』

 

と会計士の先生には残念がられながらも褒められました。

 

 

とはいえ、社長ではなくなりましたが、監査役という、いわゆる相談役的な立ち位置で会社には社員として、これからも残るのですが。

 

自分の退任の相談を清水にした時は、清水は今まで通りデザイナーの長としてやっていくとの事だったんですが、清水も僕の退任と同じタイミングでデザイナーの長を降りる事になりました。

 

個人的には正直ショックで、ちょっと病んでしまったりもしたんですが、

『若手に全てを託したい』という自分の勝手な想いを汲んでくれた部分もあったんだと思います。

 

清水とは今も仲良しですし、これからも個人的には一緒に仕事をしていきます。

 

ちなみに清水は2019SSから本格的に自分のブランドを始める予定。

個人的にも非常に楽しみです。

 

 

 

という事で、2018年、会社もブランドも新体制。

 

ブランドのディレクターに松坂生麻、デザイナーには山田拓治。

 

自分と清水が作ってきたブランドをベースに、彼らがどんな新しいエッセンスを加えていくのか、どんな世界観でどんな表現をしていくのか、とても楽しみですし、こんな状況を迎えられる自分は、とてもとても幸せだなぁと思います。

 

そして自分にも新たなチャレンジ(めちゃくちゃ意外なチャレンジ)が山盛り。

もちろん海外を中心に、Name.での仕事も沢山ありますが。

 

 

 

こうやって人から人へ受け継がれ、ブランドが会社が続いていく。

 

とてもとても嬉しく思います。

 

是非、ご期待ください!